AMU JOURNAL

はたらく人の声

2年目の夏を迎える

2024.8.13

書いた人 ― 西田 拓稔

2つのはたらき先

この夏は、隠岐ジオパーク推進機構と AMA ホールディングスという二つのはたらき先にいます。ジオパークでは、しまね環境保全活動助成金の支援を受け隠岐の4つの島を巡る移動水族館をおこない、海洋生物の魅力をコミュニティに持ち込んでいます。一方、AMA ホールディングスでは、海士町の新庁舎づくりに関わっています。単なる建設にとどまらず、地域資源の再利用と再生に関わるものにもなっています。

木材・牡蠣殻・使われなかった家具類などを集めたりする作業を行なっています。

木材を回収。
牡蠣殻も回収。
ロッカーなども運搬

それが落ち着いたら会議などで出されたアイディアを整理したり、まとめたりして資料に置き換えていく作業をしています。全く同じではないですが、水族館のときも新規施設を企画する仕事はしていたので、その時の経験をもとにすればタイプは違っても「施設運営の企画」はできるだろうと思って、この仕事に手をあげてみたのですが、やりがいをもって取り組めていますし、楽しめてもいます。

島を渡る移動水族館

移動水族館はすでに西ノ島と島後にむかい、生息地の近くに住んでいても多くの地元の人々に隠岐の海の生き物たちを紹介しています。隠岐の海の生き物といっても、島民の方がよく認知している種類もいれば、意外とそんなに認知されていない種類もいます。訪問者が好奇心をもったり、まず興味をもつきっかけが生まれているの姿を実際にみるのは、じぶんにとっても良い励みです。

魚たちを車にのせる。
そして船にのせる。
会場に到着したら、せっせと設営作業。
完成。展示スタート。
展示を見てもらう。まずは一歩前進。

どちらにもヒントがある。

新庁舎づくりと私がやっている水族館というのは一見するとかけ離れていますが、どちらも町や地域社会について考えることなので、そういう意味では同じです。だから働いています。

海の生き物について教える教育の枠組みをどうつくっていくか?をジオパークをとおして考えたり、

新庁舎づくりを経験させてもらいながら、将来のことについて考えてみる機会をもっていることなどは、自分にとっては有意義です。

魚を飼育する。水槽を置く。そこに満足していたいなら趣味でやるかまたどこかの水族館で飼育係をすればいいのです。いつまでもこの段階にいたいわけではないので、次のステップへのヒントを複業をとおして発見していけるのはありがたいことだなと思います。

AMU WORKの経験を自分に還元する。

自分がこれから何をつくりたいか?といわれると正直なところわからない部分もあります。

とはいえ新しいものってそうなりがちなものです。気にしても意味はありません。

海士町に来た当初は直感で「都会で水族館やるより、人が少ないド田舎でやる方が面白いだろ」と思ってきたのですが、具体的なアイディアはありませんでした。

ただここ1年でアムワークを通して、島のさまざまな仕事を見た上で自分が直感的に思うのは「水産・保全・教育」この3つの要素を抑えた水族館をド田舎でつくることには価値がありそうだとおもっています。正直、世の中のためにもなって自分的にも満足ならいちいち水族館という理由はない気がしますが、とにかく「水産・保全・教育」の3つから自分の新しい仕事も生み出せていけそうだと考えています。根拠はないけど自信はあります。

黙々と手を動かす職人

話はかわり、家の目の前が新しい住宅の工事が行なわれているのですが、ほぼ完成間近で、工事の人数は日を追うごとに少なくなっていきました。つい先日まで、ほとんど終わっているだろう工事現場の玄関前の階段のコンクリで左官工事をする職人の方が黙黙と作業されていました。

暑い夏。静かな集落で。黙黙と作業されている様子をみていると、すごいなと思いつい見てしまいます。人の気配がほぼない集落で、猛暑のなか頼まれた作業を黙黙とできるってすごいことじゃないだろうかと思います。

この工事が終わったあと、住宅はできて、住宅不足と言われる海士町にも誰かが住めて、そのコンクリートの階段は必ず使われます。黙黙と手を動かしていたその人のお陰でもあります。

職人さんが暑い中、こつこつ盛ん作業でつくりあげたコンクリートの階段

なにかで手を動かしている時、不安になったり上手くいかないことがあると「これってうまくいくのだろうか?」「人に評価されるだろうか?」「自分がやってることに価値ってあるんだろうか?」といったことが頭によぎることがあります。

しかし職人さんの作業をみていると、

「そんなコトを考えるのは無駄だ」

と静かに喝破されているように思います。シンプルでありながら奥深い真髄だと、勝手に感化されています。

暑い夏はまだ続きますが、たまに海で涼みながら、日々の仕事をこなしていきたいと思います。


書いた人

西田 拓稔

佐賀県出身。身近に海や生物がある環境で暮らしたいと思い、移住を決意。海士町では、水族館の運営に挑戦しています。

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