AMU JOURNAL

但馬屋さんでのお仕事を通じて、自分の仕事観について考えさせられました。

2023.12.25

書いた人 ― 高瀬 由衣

心地よい但馬屋さんの空間

但馬屋さんでは主に清掃をし、時々お夕食の時間の配膳や食器洗いのお手伝いに伺うのですが、私は但馬屋さんが提供しているものが好きだなと思います。

せかせかとお部屋の清掃をする中、ふと見上げた窓の方に見える光景がとっても綺麗です。光の入り具合や障子の影、葉っぱが擦れ合う音など、すごく美しいなと感じます。

それから、ディナーのお手伝いをした際に頂く賄いがいつも楽しみです。

野菜それぞれの味を堪能できる天ぷらは、特に大きくカットしたナスの天ぷらがお気に入りで、ジュワ〜とナスの旨味が口いっぱいに広がる瞬間がたまりません。ほんのり柚子が香って、ふわふわの卵が浮かぶお吸い物も、とっても美味しくてびっくりしました。イカの甘辛い炒め物も、甘辛い味付けに負けずイカを味わうことができて美味しいです。

ふと綺麗だなと思った、とある日の清掃中のお部屋です。

お仕事が終わった後の女将さんとのお茶の時間も思い出深い瞬間の一つです。女将さんのお客様に対する心遣いや、ご家族への愛、これまでの苦悩などに触れる度、人間らしく温かいなと感じ、じんわりと「何だか良いな〜」と感じていました。

他者や社会を主語にしない、仕事の在り方

実は、但馬屋さんでのお仕事がどうか聞かれたとき、前述したような気持ちを言葉にすることに抵抗感がありました。

それは「観光には〇〇な意義があるのだと学べた」「お客様のために頑張りたい」と地域やお客様を主語にする学び・感想を言うことが良いことなのだと考えていたからです。このジャーナルを書き始めた時でさえ、「今やっていることは誰のために、どういう社会のためになるのか」と無理に見つけ出し、記事にしようとさえしていました。

けれど、私自身の中で但馬屋さんで印象深い場面として思い出すのは、「美味しいな、綺麗だな」という、地域や他者が主語ではない、私個人の感覚でした。

なぜかわからないけれど、地域や他者を主語にした感想が生まれてこない…。

そんなことを考えていたら、私はあまりにも「仕事=他者貢献・社会貢献」という考え方にとらわれていたのかもしれない、と思わされました。

振り返ると、学生時代は途上国の支援や開発について学び、海士町に来た一番の理由も他者の声を大切にしながら活動したいと思っていたから。他者のことを考える機会が多く、「仕事=他者貢献・社会貢献」という考え方が私の中に当たり前のように居座るようになっていたのかもしれません。また、社会には色々な理由で仕事をする人がいるけれど、私は性格や過去の経験から他者貢献・社会貢献をしたい人なのだと決めつけ、他者貢献ではない形で仕事をすることをどこか諦めていたのだと思います。

だから、「何だか良いな〜」という私個人の感覚を大切に仕事に携わることができる自分自身もいるのだと分かり、嬉しかったです。そして、「仕事=他者貢献・社会貢献」に拘る自分を手放し、私個人の感覚を大切に仕事をし、純粋に仕事を楽しむ自分を少しずつ、少しずつ受け止められたらなと思います。

書いた人

高瀬 由衣

埼玉県出身。海士町で、人々の声を大切にできる活動をしたいです。現在は、「障がい者グループホームあまの里」「脇谷商店」「民宿 但馬屋」の3つで勤務。

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