AMU JOURNAL

はたらく人の声

人間の努力ではなくて自然にすべてを委ねるしかないのです。

2021.1.29

書いた人 ― 雪野 瞭治
はたらき先 ― 飯古定置

今週の業務はどうでしたか

朝一番で漁に出る前に、船の上で行う準備が少しづつ分かるようになってきました。完璧ではありませんが、指示をされる前に一通り目の付く範囲の準備ができるようになってきました。

それぞれの人の動きがどのような意味を持っているのかも、ほんの少しずつですが分かるようになってきました。先の動きが少しだけ予測ができるようになってきたので、今自分はこれをしたら少しは役に立てるかなと思えるようになってきています。最初の週に比べると充実感や達成感が感じられるようになってきました。

今週の一番の驚きは何でしたか

今週の驚きですか。あいかわらず色々あるのだけれど、象徴的なシーンがひとつありました。定置網の職員の方が、必ず毎朝にお清めの塩かなにかを海に撒いていたシーンがあって、その光景がすごく美しいなと感じました。

あっ、そういえば、イカが明日は絶対入っていそうだからと獲れたイカを入れるイカ箱を前日に多めに用意しとおくと、そういうときに限ってイカがとれないというジンクスが職場の人たちの間では定番の話になっているんですよ。当初はおもしろおかしく聞いていたのですが、つい先日、その出来事が実際におこって色んな意味でビックリしました。

このように、定置網漁というのは、網を実際にあげてみるまで魚がどれだけいるのか、そもそも大漁なのかどうかもわからないものです。網を仕掛けてからは、人間の努力ではなくて自然にすべてを委ねるしかないのです。

当たり前ですが、自然を相手にするというのは思い通りにはいかんもんだなとしみじみ思います。それでも、やっぱり悔しいと話す人もいたり、一方でこれを受け入れるしかないっていう言葉を年配の方がスッと言っているのを聞くと、自然に向き合って共に暮らしてる人たちと仕事をしてるというのを肌身で実感できます。自然に向き合い続けてきた人たちのそばで一緒に仕事ができている今のこの状況が、すごく素敵だと感じています。

最近どうですか

最近、仕事で「ちゃうやろ」「そうじゃないでしょ」と言われた時なんかに、もともとそんなにへこむタイプではないけれど、何が違うのだろうと考えこんでしまうことが多々あります。これって、良くある話だし、ただただ直していけばいいだけですよね。頭ではわかるのですが、それでもなんで考えこんでしまうんだろうって思った時に、ちょっとあることに気が付いて…。

現場の仕事は基本的に無駄が本当にないのです。考えたらわかるやろっていうことは、丁寧に考えれば分かることなんです。別の見方をすると、職場の皆さんがどれだけ美しい所作をしていたのか、ということに気がつきました。

漁の後の片付けもそうだし、出荷するための箱を置く場所も無駄がなく理にかなっています。そういう美しい所作、行為を自分は出来ていないのだという事実を、つきつけられているから、少し考えてしまうんだなということに気がつきました。反省することが良くも悪くも増えていっています。

漁師という命をかけた仕事の世界では、多くの人が当たり前にしてる日常の所作や仕事がこんなにも美しいんだなって思うようになってきたのです。一方で、だからこそ僕もしっかりやらなあかんなと。

実際の作業のやり方を教えてもらう際に、「な?簡単やろ!」って。簡単そうに見えても、後に僕がやってみると最初は全く簡単にできないんです。でも、繰り返しているとどこかのタイミングで「無駄がない…」って全身で感じられるのです。遅れて実感するものなのでしょうね。

色々と話してしまいましたが、早い話が、自分がいかにガサツな人間であったかと反省する日々を過ごしています。丁寧に片づけをしたり、先々の動きを考えて無駄のない準備をするなど、普段の生活の中でも美しさという観点で動けるようになりたいと考えています。

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飯古定置 について

書いた人

雪野 瞭治

兵庫県出身。海士町複業協同組合のAMU WORKER第1号。技術と科学の視点から、興味の赴くままに挑戦してます。

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