AMU JOURNAL

はたらく人の声

ダサくても、夢を描いて実現する。

2023.8.3

書いた人 ― 西田 拓稔

移住した4月は「ヒマだー」とつぶやきながらのんびり過ごし、5月にAMU WORKでの仕事が始まり、6月にAMU WORKの仕事以外の活動もはじめました。4月のヒマが嘘のように充実しだしています。

「水族館を考えていたので、打合せに来ませんか?」

ある日、「小学生が遠足でくるから、魚を見せてあげない?」と地元の漁師さんに頼まれ、水槽の設置をしていました。設置作業をしていると、突然いろんな人がやってきて、「この場所で水族館をもともと考えていた」と言われ、続けて「詳しい人がいないので、西田さん、今から打合せに来てもらえませんか?」と言われました。

作業中に、打合せに呼ばれるその瞬間。

そもそも、私の移住の目的は「地方で小さな水族館をつくること」でした。

目的はもって来ていたのですが、「ま、2~3年くらいでのんびりやれたらいいし、やれんかったらまぁしょうがないかなぁ」とか構えていた中途半端な私に、「水族館の話」が移住2か月目で向こうから来たわけです。びっくりです。

今は、「話は来たのだから、中途半端終了!」と気持ちを切り替えるようにしています。

「どこまで目指せるかわからんけど、まずやれることをしっかりやっていこう」です。

そして水族館の話を聞かされた時に、ふと、移住する前に元上司とお酒を飲んだことを思い出しました。

平凡な自分でも、できることはある。

移住する直前に、かつて水族館でお世話になった上司の方々とお酒を飲みながら話す機会がありました。

(西田個人としては)緊張感のある方々と移住前に飲み会。

中には独立して、新しい(立派できれいな)水族館をつくることに取り組んでいる方もいました。一方で自分は何の見込みもなく、海士町に移住しようとしている。「なんで海士町に移住するんだ?」と聞かれても、とくに具体的な見込みは説明できないので「あーいやー、島暮らしっていいじゃないですか」みたいなしごく適当な回答になる。つまり、はたから見れば「フラフラしているだけ」ともとられるような状態です。だいぶ情けない対比です。

でもなぜか、この時はあまりネガティブに思うことはありませんでした。

「自分は、この人たちのようなことはできない。でもこの人たちができないことが、自分にはできる」と当たり前のことなのだけど、謎の確信が自分に生まれていることに気づきました。いつもこの元上司の方々と接するときはちょっと挙動不審気味になるのですが、この日は珍しくそうならなかったです(と思う)。

それから数か月たって今にいたっているわけですが、自分が今、海士町でできることが、明らかになりつつあります。答えはシンプルです。水族館をつくることに協力をし、海士町に海の世界への玄関口をつくるのです。

実際、AMU WORKを通して働いているジオパークで短期間の水族館を開催したとき、こんな声をいただきました。

正直、今作っているものは、いわゆる水族館とは比べ物にならないほど小さいですし、しょぼいなぁ、、、とついつい思ってしまうことが多々あります。でも離島の僻地ともいえる海士町で、海洋生物を観察したり楽しめる空間がうまれること自体に価値があるのだと思います。

海に近いからといって、島民や観光客は海士の海と関われているかというと、意外とそうでもない背景が感じられます。

だから、まぁとにかくやってみよう。

前置きが長かったですがそう決意したという話です。

今はいろんな作業を行っています。

元々使われていた海水パイプをチェックする(様子を見ていた知り合いから“業者“と言われる)。
もちろん魚の世話をしたり。
いろんな人とお話ししたり。

日中はAMU WORKERとして仕事しながら、余った時間でこういったことをしています。

遊休施設を復活させる。

水族館の対象地は夏時期以外はほとんど使われていない施設で、その再活用の一環として、水族館を考えているとのこと。それ以上は特に具体的には決まってない様子だったので、いったん水槽を置いていくことに。

いろんな人と協力し合って水槽を動かす。
とりあえず水槽を置いてみた。味気なくても、まずは一歩前進。

限られた予算でまわしていくので、島内にある使われなくなった机を探して水槽台の代わりにしたりしています。

まさに今、ギリギリなのは水温でしょうか。夏であまりにも暑くて、しかし空調がない建物なので、水槽の水温が上がり過ぎないように、扇風機で強引にギリギリの調整をしています。

島の中で使われていなかった扇風機や、自分の家から私物の扇風機を持ち込んでしのいでいるところ。

まさに海士町のキャッチコピー「ないものはない」です。(まぁ、本当に必要だけどない物があったら、買いますが。さすがに水槽用クーラーはポチッと買いました。)

魚も数種類飼育をしていますが、健康状態が安定してから、ご紹介したいと思います。

さらに水量1.5t(1500ℓ)の生け簀を復活させる。

とりあえず、手持ちの水槽を置いただけですが、次に着手しているのは施設の中で、使われなくなっていた生け簀を復活させること。ただ、海水を送るポンプが壊れてしまっていて、今は稼働していません。このポンプを交換することで復旧させますが、20年以上前の設備なので、まずは掃除から始めます。

とても古く汚れた設備。これをひたすら掃除。
夜に、1人で、もくもくと掃除。変なテンションになって自撮り。
だいたい掃除完了。

あとはポンプを付け替えたりするのみです。

これが復活できれば、少し大きい魚(例えばサメなど)を飼育することができます。生け簀とはいえ、なかなか夢が膨らみそうです。

「目標と今」のギャップは気にせず、一歩踏むことを大事に!

正直、現状はかなりみすぼらしい見た目です。しかしまだ制作段階です。これからです。

そもそもなんの見込みもなく移住してきて、2か月目に目標としていた取り組みができつつあります。偶然が重なってできていることではありますが、行動しているから偶然と出会うのだと思います。だから目標の達成方法がよくわからなかったとしても、いったんは気にせずこの幸運に感謝をしながらよりよくすることを目指してまた行動していきます。

今がしょぼくてダサくても、一つ一つ達成していく予定です。

書いた人

西田 拓稔

佐賀県出身。身近に海や生物がある環境で暮らしたいと思い、移住を決意。海士町では、水族館の運営に挑戦しています。

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