AMU JOURNAL

はたらく人の声

2月からナマコ工場で働いています。

2023.3.1

書いた人 ― 青木 美伽

仕事のこと

2月から宮崎さんの「ナマコ工場」で働いています。ナマコ工場では、海士町の漁師さんたちが採ってこられたナマコを買い取り、乾燥ナマコに加工して、中国へ出荷されています。私はその「乾燥ナマコに加工する」作業に入っています。最も一般的なナマコが「マナマコ」といわれる種類。海士町では、主にこのマナマコの赤、青、黒が生存しているそうです。

午前中は、ナマコの内臓を出して、身体の中の砂や汚れを綺麗にします。取り出した内臓や赤ナマコの卵巣は、「塩辛」や「ばちこ」という商品に加工するため、砂や泥が残らないよう処理します。作業場から生け簀までナマコを運んでくれる、手作りの「ナマコスライダー」があるのですが、内臓を取り除いたナマコたちは、スライダーに乗って、生け簀まで運ばれていきます。この光景が面白く、とても可愛いです。

午後からは、午前中に内臓を取り出して、綺麗にしたナマコを茹でる作業をします。また同時に、前回茹でたナマコの水抜きをする作業をします。ナマコの身体の約97パーセントが水分と言われており、一晩生け簀に入れると、泥や砂を10%~15%くらい吐き、茹でて10分の1の大きさに。そしてさらに干していくとその3分の1になり、最終的には、水分、塩分、体内の泥を除くと、35分の1くらいになると教えていただきました。ナマコの内臓は口から肛門までわかりやすい構造になっており、丁寧に取り出すと、口から肛門まで一本に繋がっていて、内臓のしくみを見ることが出来ます。内臓に詰まっている砂を無理に出そうとすると、逆に砂が食い込んでしまうため、海水を使って、宮崎さんや但馬屋の貴恵さんが砂が残らないよう綺麗に処理されています。茹でるときの加減や温度の上がり方でもナマコの仕上がりが変わってしまうので、その加減を見ていただきながら、出来上がったノウハウの元で作業をさせていただいています。

時期によって腸の味が変わったり、ナマコによっても味が違ったりするため、塩辛を作るときは、その日の腸の味を見ながら、入れる塩の量を調整されています。味を見ながら丁寧に作られていて、宮崎さんや但馬屋さんのナマコへの思いが伝わってきます。まだまだナマコのこと、そこで働く方々のことを、理解できていませんが、休憩時間に色々なお話を聞かせていただいていると、私自身美味しいものや味に対してのこだわりがなかったこと、鋭い味覚がないことに気付きました。

宮崎さんや但馬屋さん、高島さんご夫婦は、ナマコの仕事以外に、お米や野菜、糀や味噌、醤油など手作りされています。手作りのお菓子や調味料を持ち寄って、何がどう美味しいのか、何が足りていないのか、その違いを言葉にし、大切にされているのを感じました。ただ美味しかったらいいのではなくて、本物の味、本当に良いものを求める気持ちが強く、その違いを探し続ける、求め続ける、その志の高さに、驚き、憧れを感じました。同時に、自分の中で眠っていた何かがこみあげてきました。

驚いたこと

ナマコが可愛いということです。元々生き物や小さな虫たちは好きでした(どうしても駄目な生き物もいます)。ナマコは不思議な魅力があります。ナマコに触れたり、ナマコを見ていると、なぜかどんどん愛おしいという気持ちが強くなっていきます。そして、宮崎さんご家族や一緒に働く方々を知れば知るほど、好きになっていきます。ナマコ工場での休憩時間は美味しいものを食べながら、大好きな方々とお話しできる時間です。身体も心も喜び、満たされていくのを感じます。

最近どうですか?

宮崎さん夫妻が仲間と立ち上げた「暮らしに楽しみの種をまき隊」が海士町にあり、そこで活動されている方々が役場の方と一緒に、先日、長崎県佐世保市の農園「菌ちゃんふぁーむ」で有機栽培をされている「菌ちゃん先生」こと「吉田俊道さん」を呼んで下さり、講演という形でお話を聞かせていただく機会がありました。

そのお話の中で印象的だったことを書きます。

自然界には腐敗と発酵がはっきりと分かれているということ。病原菌や害虫はわざわざ不健康な野菜または不健全な部位だけを食べて、それを再び土に戻して次の生命の材料としてくれている。虫や菌には老化した不健康ないのちを食べて、自分の元気な体を作ることのできる特別な能力を与えられ、日々の生活循環をスムーズに進めるためのポンプという大切な役割を担っている。つまり、菌や悪いものとされているものが、実はこの自然界を守っているということ。これは地球の掟であり、そのおかげで地球上に生命が栄え続けてこれた。この掟は農薬等の毒物でいつまでも抑えることはできない。虫や菌が私たちを腐らせるのではない。弱っているのは人間であり土である。だから人間の都合の良いように殺すのではなく、共に生きることを考えていくということ。

吉田さんは共に生きるという形をとった農業のあり方をすでに実践し、農薬も化学肥料も使わず菌たちの力を借りて、健康的な野菜作りをされています。そしてそのノウハウを具体的に教えていただきました。

食べること、生きること、それはすべて大地につながっているのだ思いました。微生物や虫たちの力を借りて土を豊かにすること、元気な野菜や米をつくり、その命をいただくこと、それが私たちの豊かな生活につながっていて、本物のおいしさにつながっている。ナマコ工場で働かれている方々のように本物を目指して、美味しいものを美味しく食べるということにもっと関心をもっていきたいし、人にも環境にも優しい元気な野菜や米作りを本気で目指したいと思いました。宮崎さんと出会ったことで、自分の中に眠ってしまっていた気持ちが動き始めたのを感じました。そしてここで働く方々が大切にされているものを、私も大切にできるようになりたいです。

書いた人

青木 美伽

三重県出身。2022年6月に放送された「ガイアの夜明け」を見て、海士町複業協同組合を知る。AMU WORKERとして島の人と働く姿に憧れて移住を決意。

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