AMU JOURNAL

はたらく人の声

”魚屋”としてのマインドを持ちたいと思うようになりました。

2022.2.21

書いた人 ― 山郷 志乃美
はたらき先 ― 海士町漁業協同組合

2021年7月〜2021年12月の半年間、大漁で働いていた時のことを外報としてまとめました。

なんで大漁を選んだの?

大敷で出荷作業をするときにいつも箱の数を記録している漁協の方々がいて、そこで初めて漁業協同組合という存在があることを知りました。純粋に獲った魚がどこへ行くのか追ってみたい気持ちと、漁師さんからもっと魚を売りたいという声を聞いて勉強してみたいと思ったので、漁師と消費者を結ぶ漁協を次の勤務先に選びました。

(働く中で産業間の繋がりを感じられることと、そのつながりの中で生まれた興味から次の職場を選べるのがマルチワークの良い所です)

どんな業務をしていたの?

漁協での主な仕事は、海士町漁協直売所の”大漁”での業務で、具体的には以下のことをしていました。

品出し

まず朝一で、島の漁師さんから仕入れてきた(漁協の職員さんが毎朝各地区の漁港に取りに行きます)魚の重さを図り(大体は漁港で計ってきてくれます)、販売価格表の通りに値段をつけて、品出しをします。

サザエやアワビの発送

受注分のサザエやアワビ等の発送作業をします。お盆や暮れの時期は、品出しと発送作業だけで午前が終わります。

サザエのサイズわけ

サザエをS,M,L,LLサイズに分けて、生け簀に入れておきます。

品物や備品の補充

一通りやることが終わったら翌日の準備として商品や箱・保冷剤などの補充をします。

魚さばき

魚を買ってもらいやすいように、三枚におろしたり柵にしたります。お客さんから注文があったときにも、魚を捌いていました。

大漁で働く魅力は?

魚を知れる

時期によって店に出る魚の種類が変わっていく様子が見られたり、定置網では見なかった釣り魚も見れたのが面白かったです。さらに、上司の藤澤さんには、美味しい魚の食べ方から、なぜヒラマサはブリよりも高いのか、や魚の生態まで、魚にまつわる色々なことを教えてもらいました。

魚を捌くのが劇的に上手になる

島に来るまで魚が全く捌けなかったのですが、大漁で捌き方を教えてもらい&ほぼ毎日店で捌いていたおかげで、捌くのが劇的に上手になりました。

新しいアイデアを求めるクリエイティブな環境

新しいアイデアを積極的に求めている職場環境で、勤務開始日に大漁のテーマとして「もっと魚を食べてもらえるようになるお店になるには?」というのもらい「ナイスな魚屋アイデア」というのをまとめ提案したところ、そのうちの<大漁・しゃん山ミニライブラリー>と<魚さばき教室>を実施させていただきました。

他にも、以下のように、<魚>と<つなげる>という観点から、学校給食における地産地消を進めたり、まるどマーケットに出店したりしていて、アイデアによって仕事の幅が広がるクリエイティブな仕事だなと思いました。

(素晴らしい記事にまとめられていますので、ぜひご覧ください。おいしくなければ意味がない島の地産地消にもっと、アイデアを / 日本仕事百貨


★大漁&しゃん山ミニライブラリー

関東に住んでる時、スーパーで見る魚のほとんどが切り身で、魚の名前も知らないしさばき方も分からないし、魚食生活に全く馴染みがありませんでした。島に来てからも、魚を捌けなかったりレシピが思い浮かばなかったりで、魚料理を作るハードルを感じていたため、私のような都心から島にきた若い人に向けて魚に親しんでもらいたいという思いで魚料理のレシピ本や魚図鑑を置いたり、大敷で働いていた経験から漁師になった人の伝記を置いたり、子どもたちにも魚や漁に親しんでほしいという思いでそれらにまつわる絵本や食育本などを置きました。子供達が絵本を選んでいたり、観光客の方が伝記をじっくり読んでいたり、常連のお客さんがレシピ本を借りていく姿を見て、嬉しくなりました。

★魚さばき教室

若い人に魚に親しんでもらいたいという思いで、実験的に知り合いに声をかけて1回実施しました。お稽古にしたい!と言ってもらえたのが嬉しかったです。また、店で魚を選んでもらう時に、藤澤さんが魚の説明とかおすすめの食べ方を紹介してくれたことが特に好評でした。


大敷とのつながり

大敷で働いた経験がこんなふうにつながりました。

大敷から届く”山郷便”

大敷から漁師さんチョイスで魚を一箱分仕入れるという試み。選ぶ魚はおまかせして、時々売れ行きをフィードバックしていました。また山郷便の魚は、基本的には私が値段をつけさせてもらっていました。

大漁×大敷でまるどマーケットに出店

月に1回開催されているまるどマーケットに、大敷とコラボして参加しました。大敷は鮮魚を販売、大漁は魚さばきサービスを実施。港に船が着いた時には歓声があがり、鮮魚が並んでいる姿は見ものでしたし、いつもより地元のお客さんが来てくれていたようで、まるど主催者方々も喜んでいました。魚さばきサービスも好評で、あっという間に開催時間が終わっていました。

どんな変化や成長があった?

後で紹介する色々なスキルを身につけることが出来ましたが、この半年間での1番の大きな変化は、私の大漁で働く”マインド”が変わったことです。最初はスーパーの中の魚コーナーで働くようなマインドを持っていたのですが、次第に、個人経営のいわゆる”魚屋”のようなマインドを持ちたいと思うようになりました。

具体的には、初めのころは、『魚をもっと買ってもらうために、魚をもっと知ってもらうことが必要で、そのために魚の説明カード等を置いたらいいのではないか』と考えていました。そこには、買ってもらうことだけが目的じゃなく、魚を知れる魚屋になりたい、という意識もあってのことだったのですが、いずれにせよそのアイデアは店員が誰であるかに係わりません。しかし、藤澤さんや森下さんと働いている中で、『”魚屋”は、店員が誰であるかが重要で、それは店員こそが魚のエキスパートだからだ』と気づきました。

そして、そこにキラッと輝くものを感じました。そのキラッと輝くなにか(多分それがその仕事人としての自負や誇りなのかもしれません)を見つけて、私自身もキラッと輝くものを持って働けるようになりたいなと思いました。

また、冒頭でも少し話したように大漁で働く中で色々なスキルが身につきました!Lv.1のものは、「このスキルが必要だ!」と分かった段階のもので、次に大漁で働くときにはもっと磨けたらいいなと思っています。

最後に

働き初めの頃のエネルギーを持続できなくて、やりたかったけどできなかったことがあって、心残りがあります。その1つが、脱プラスチック容器。いつか実現したいです!

おまけ 

お気に入りのサザエ写真集!

サザエ脱走中
まるで島!アイランドサザエ
激レア!星付きサザエ

この記事のはたらき先

海士町漁業協同組合 について

書いた人

山郷 志乃美

埼玉県出身。初めての釣りに感動し、漁師を目指し海士町へ。魚を起点に、漁師・漁協・森林組合・福祉施設などで勤務。

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